映画を観たくないけど 内容を知りたい人用映画紹介
序章
場面街中……
神木君が黒い霧から逃げている。
街中を走り続け
結構な距離走っている。
すれ違う道行く人達からも
黒い霧が飛び出している。
神木ナレーション
「いつもいつも逃げてばかりの人生……」
「この目の所為で
嫌な物ばかり見えてしまう」
「どうせ運命は変えられない」
「世界は決して皆に公平じゃない」
「何故自分だけ」
ナレーションが
柴咲コウに変わる……
「世に不思議は多けれど」 「どれほど奇々怪々な出来事も」 「人が見なければ…… 拘わらなければ……ただの現象……」
柴咲コウ(顔は見えない)の姿と
神木君の走る映像を交互に見せる。
「人こそこの世で最も摩訶不思議な生き物」
場面神木君に戻って……
まだまだ街中を走る神木君。
途中人にぶつかり怒鳴られたりしながらも
最終的に1つのビルに駆け上る。
神木君はそのまま屋上まで行き
飛び降りようとする。
「もうこれ以上何も見たくない」
「シにたい理由は特にない」
「生きていたい理由はもっとない』
「もういいか……」
と、その時
飛び降りようとする神木君の周りを
透明でデカめな蝶々(15cm位)が舞う
その蝶に導かれるように
神木君は後をつけて行く。
蝶は街の路地裏に入っていく。
すると先には
鳥居がいくつも並んでいる場所がある。
鳥居に入っていく神木君。
着いた先には
藤の花に包まれた建物がある。
導かれるままに
建物の中に入る神木君。
建物の中は変わっていて
植物が沢山飾られている。
蝶は役目を終えたように姿が消える。
すると神木君の前にある扉が開く。
部屋の中に入ると
召使いの女の子が2人と
柴咲コウがいる。
コウが口を開く
「ここは願いを叶える店」
「さぁ貴方の願いは?」
オープニング
キセルで煙草を吸い
煙を神木君の方へ吐き出すコウ。
煙を嫌がる神木君。
笑う召使いの二人。
すると
コウが口を開く。
・どんな願いでも叶えてあげる
・ただし対価を頂く
・与えられたものには全からず代償がいる
・何かを得るには対価が必要
・それがこの世界のルール
そして神木君の願いを再び聞くコウ。
「願い?」の神木君。
するとコウが
座っているソファーの前に置いてある
水のはった入れ物の中を覗き込む。
・ただ見えるだけで祓うことはできない
・いつも逃げてばっかりね
・君、居場所を探しているの?
困惑の神木君。
再びキセルを吸い煙を吐き出すコウ。
すると煙が【四月一日君尋】の字を形を作る。
「四月一日と書いて【わたぬき】
下の名前は【きみひろ】」
「君を尋ねる」
とコウが言う。
「誕生日が四月一日でもうすぐか?」を
神木君に尋ねるコウ。
答えを聞く間もなく
神木君の目が珍しいと言う。
「妖が見えないようになりたいのね?」
何も言わない神木君。
ここでの2人の会話内容……
・神木君は天涯孤独
・目の所為で誰とも拘わらなくなった
・嫌な物が目に入るくらいなら
誰とも関係を持たない方が楽
・神木君の願いを叶えるには
相当な対価が必要
・神木君が一番大切な物を
差し出さないとダメ
神木君が
自分の一番大切な物が
何か分からない事を指摘するコウ。
そこで突然帰ろうとする神木君。
その神木君の手を掴み止めるコウ。
「貴方ここに住む?」
と言う。
突然の提案に困惑する神木君。
「丁度家政婦を探していた」と
言うコウ。
「貴方がここに来たのは偶然じゃない」
「この世に偶然なんてない」
「あるのは必然だけ」
「全ての出来事には意味がある」
と告げるコウ。
そこでコウに客が来たと
召使いの2人が声を揃えて言う。
すると
願い事をしにきた
一人の20代の女性が入って来る。
・自分は妬まれやすい
・自分はモデルをやっている
・彼氏が経営者でもうすぐ上場する
と立て続けに喋り出す。
すると身体から黒い霧が出始める。
・自分は派手に見えるのかも
・自分は皆と仲良くしたい
するとコウが召使いの名前を呼ぶと
2人は指輪の入った入れ物を持ってくる。
・指輪を絶対に外さない事
・それが貴方が払う対価
と女性に告げるコウ。
「そんなことで良いの?」と
指輪を小指にはめる女性。
すると
身体から出ていた黒い霧が
指輪に吸い込まれる。
それを
観察している神木君。
出ていく女性。
「彼女がどうするかを見届けてみたら?」
のコウ。
「意味が分からない」と言って
去ろうとする神木君。
「”指輪が何を意味するか”を考えて見ろ」
と言うコウ。
松村、ティナとの出会い
場面変わって学校……
気が付くと
コウの屋敷にいたはずなのに
教室の机に伏せて寝ていた神木。
『夢?』
周りでは普通の日常が流れている。
『いや、これは現実』
黒板の右端には
日直【四月一日君尋】と書かれている。
時間が流れ
教室から誰もいなくなる。
『また誰とも拘わらない日常が始まる』
の神木。
教卓の上に集められたプリントを手に取り
教室を出る。
廊下を歩く神木。
曲がり角で人とぶつかるり倒れる。
ぶつかった相手は
ツインテールの玉城ティナで
慌てて駆け寄りプリントを拾ってくれる。
「えっと…・・わたぬき君?」
「ホントにごめんね」
とティナ。頷く神木。
そこへ松村北斗が現れ神木に声をかける。
「立てるか?」
と手を差し伸べる。
江口陽介さんに似すぎてません?
若ぐっちゃん。
ヘイ!イッツオ~ライ!!♬♬
するとそこへ
再び透明な蝶が現れ
それが目に入る神木。
プリント、ティナ、松村を置き去りにして
蝶を追いかけて行く。
場面変わって街中……
蝶を追ってきた神木が
渋谷駅の外に行くと
蝶の姿がスッと消える。
そして
再び蝶が姿を現した先を見ると
コウに指輪をもらった女性が
何かのサンプルを配っている
人と話をしている。
・パーティーが多いから助かる
・自分は会社を経営している。
・ビジネスでもパーティーでもデートでも
これならいける
・彼がうるさい
・今使ってるやつもお気にいりだけど
皆に真似されちゃって
と次から次と喋る。
その時
小指に痛みを感じる女性。
小指を見る。
指輪から黒い霧が出ている。
(これは神木にしか見えていない)
場面変わってコウ……
ソファーに寝そべりつぶやく。
「気付けるかしら?
彼女は対価に……」
水の中に渋谷の街が映っている。
ジョロウグモ(りほ蜘蛛)現わる……
場面戻って渋谷……
待ち合わせをしていた友達と
合流している女性。
会話をしていると
再び小指に痛みが走る。
指輪を外そうとする女性。
それを見た神木が
「駄目だ……」とつぶやく。
すると女性の元へ
奇抜な恰好をした
磯村勇人が近寄ってくる。
そして耳元まで口を近づけ
「嘘つき」
と言ってその場を去っていく。
次の瞬間指輪が粉砕して
黒い霧が女性を包み込む。
すると女性が
黒い霧から逃げる為に
走り出す。
少し移動した先で立ち止まり
必死に振りはらう動作をしている。
すると黒い霧は
雪の様に次から次と
振り注ぐ形になっている。
地面にたまった黒い霧は
水の様になり
今度は
女性の身体を
漢字の形を作りながら
顔まで登ってくる。
「うるさい!!」
と叫びならが街中で暴れまわる女性。
道路に飛び出してしまう。
神木君が慌てて助けに入り
車に弾かれずに済む女性。
「うるさい!!」と叫びながら
その場を去って行ってしまう。
次の瞬間
新たな女性の声が聞こえる。
「へぇ、あれが見えるの?」
声の方を見た瞬間に
世界が変わる……
空間はそのままだけども
走っていた車や
その場にいた人間の姿は消えている。
そして
横断歩道の真ん中に
一人の女(吉岡りほ)が立っている。
次の瞬間
神木の目の前まで来ている。
・神木の目に注目する
・神木は噂の子
・運命は決まっている
・抗ったところで結果は同じ
・全ては必然
・おせっかい、シんだ方が楽だった
・善意は残酷
・思考停止は最高の快楽
・自分の願いは神木の目
・今すぐ食べちゃいたい
「欲しけりゃどうぞ」と神木。
・今食べても美味しくない
・簡単に投げ出しちゃうね
・美味しくなったら食べてあげる
そう言うと神木にキスをする。
次の瞬間空間は現世にもどり
神木は横断歩道の真ん中に立っていて
まわりには車が走っている。
きょろきょろの神木。
場面変わって学校の教室……
ティナが神木に声をかけてくる。
「昨日のプリントはちゃんと……」
次の瞬間後ろから声がする。
松村が後ろに立っていて
「届けた」と続きを言う。
振り向く神木に対して
「勝手に消えるな」の松村。
その松村に対して
「ちゃんと謝って」と
神木は怒っていると意見するティナ。
「全然怒ってない」の神木。
「怒ってないなら仲直り」のティナ。
よく分からないけど謝る神木。
「今度遊ぼう」のティナ。
小指を差し出す。
神木の願い……
場面変わってコウの屋敷……
「ジョロウグモにあったの?」のコウ。
「あの人なんなんですか?」の神木。
・「ちょっと面倒な相手」
・「気に入られたでしょ?」
と不敵に笑うコウ。
「あの人の所為であんな目に……」
と黒い霧に襲われた
女性を気遣う神木。
街の片隅で
女性は霧に包まれて
気がおかしくなった様子で
座り込んでいる様子の絵が挟まれる。
・何かを得るには対価が必要……
・それがこの世界のルール
・与えすぎてもいけない
・奪い過ぎてもいけない
納得いかない神木。
更にコウが続ける。
・妖が見えない様になりたい
・その願いの奥に”想い”があるでしょ?
戸惑う神木。
更にコウ。
・何が苦しいか
・何が心地よいか
・もう分からない?
神木が心を打ち明ける
・初めて遊ぶ約束をした
・そういう普通の人生を歩みたい
「それが貴方の想い?」
とコウが聞き
神木の頭をポンポンとなでる。
驚く神木。
・世界というモノはあるではなく
自分で作るモノ
・見つけなさい
・自分にとって本当に大切なモノは何か
考える神木。
場面変わってベットの上……
目を覚ますと
コウの屋敷で寝ている神木。
そこへ召使いの女の子二人が
「コウが大変」と言って呼びに来る。
コウの元へ行くと
酒瓶片手に部屋で倒れている。
「飲み過ぎた~」と言って
泥酔している。
しかし「お腹すいた~」と言い出す。
召使いの2人も言う。
場面変わって食卓……
コウの屋敷の食卓に
朝ごはんが並んでいる。
(卵焼き、大根おろし、梅干し、漬物、
焼き魚、味噌汁、白ご飯)
「いただきます」の3人。
同時に味噌汁を口にして
「美味しい」と言う。
「いえ……
そんな大した物作ってないので」の神木。
コウが神木に「食べないのか?」と尋ねるが
神木は
・食べるが好きじゃない
・特に自分で作ったものは
と言う。
その場を去ろうとした神木だが
ふと周りを見渡す。
場面変わって……
神木がコウの屋敷の掃除をしている。
それを眺める召使いの2人。
手伝いを促す神木。
渋々手伝う2人。
掃除が完了するとコウが現れ
「悪くないわね」と言う。
神木が帰ろうとすると。
コウが何やらお願いをしてくる。
りゅうこう寺に訪れる神木と磯村……
場面変わって。
踏切で電車待ちをしている神木……
「どんだけ酒好きなんだよ」
とつぶやく。
(コウに酒を買ってくるように頼まれていた)
次の瞬間
真横に磯村勇斗が立っていて
神木に
「りゅうこう寺はどこか?」と
聞いてくる。
神木は知っていて
口で説明をはじめるが
それを遮る様に
「一緒に行ってもらっても?」
と言ってくる磯村。
場面変わってりゅうこう寺……
松村が弓を弾いている。
そこへ神木が磯村を連れてくる。
そこにはティナもいて
弓を放った松村に拍手している。
そこで2人に気付く松村。
「よう」と愛想なく言い
神木はお辞儀で返す。
ティナは笑顔で手を振る。
笑顔の神木。
そこで磯村が口を開く。
「突然すみません。
本堂を見せてもらいたいのですが?」
と
「どうぞ」の松村。
磯村は神木も一緒にと誘う。
断って帰ろうとする神木だが
磯村が手を引き無理矢理連れて行く。
そして一言
「面白い物があるんですよ」と言う。
場面変わって本堂……
中を見学している一同。
ティナが神木に話しかける。
・「恰好良かったでしょ松村君」
・見たことないの?松村君の弓神事
・的を世の中の悪い事に見立てて打ち抜く
・一年の厄を祓う
「へぇ」と関心する神木。
「4月1日の桜祭りでやるよ」とティナ。
その時
「やばいねこれ」と
声が聞こえる。
見ると
本堂に置かれている
扉のついた置物に
磯村が興味をひかれている。
何かを感じる神木。
「なんだこれ?」と声を漏らす
松村が説明する。
「相当質の悪い奴を
うちの先祖が閉じ込めたらしい 」
「子供の頃に絶対に開けるなと言われた」
回想シーン……
幼少期の松村が
鍵穴から中を覗いている。
中には黒い霧が渦巻いていて
その奥に大きな目玉があり
それが一気に近付いて来る。
場面現世に戻って……
「暗闇の中の絵が
俺の方を覗いていたような気がした」
と松村が説明する。
「貴方はその話を知ってて見に来たの?」
と磯村に聞くティナ。
「趣味なんだ。
心霊スポットを見に行ったり
怪談話を聞いたりするの」
「そういう理不尽な力を前にすると
人間ってちっぽけだなって思って」
「たまらないんだ」
とヘラヘラと語る磯村。
「変わった趣味」
と言って距離を取ろうとするティナ。
すると磯村が「君は?」と
ティナに質問をして
ティナの方へと歩いて行き
距離を詰める。
そして
「君ももってるんじゃないの?」
「とっておきの怖い話」
と言ってティナの肩を持ち
耳に顔を近づけて
「良いよ話して」
と小声で囁く。
磯村に促され語り出すティナ。
とても幸せな夫婦がいたんだって……
2人の人生には
嫌なことなんて何も起こらず
毎日がホントに幸せで……
その夫婦の間に子供が生まれて
そして願ったの……
私たちと同じように
幸せが
この子にも
この子の伴侶となる相手にも
訪れますようにって……
この間ティナは
ミュージカルの様に
本堂の中を動き回って
語っている。
その子は大きくなって
伴侶を見つけて
両親の願い通り
幸せな人生を送ることができた……
やがてその子は
結婚をして子供が生まれて
自分達の親がしてくれたように
祈ったの……
私たちと同じような幸せが
訪れますようにって!!
そしたら
どこからともなく声が聞こえたんだって……
この子の分の幸せは
君達とその親が
使い果たしたんだから」
それを聞いていた磯村が
「それが願っていた幸福の対価!!」
と嬉しそうに笑って語る。
『対価』に反応する神木。
「そういう事なのかな……」
と虚ろな目をしたティナが
ボソッとつぶやく。
「すばらしい」
と笑って拍手する磯村。
・その子は何世代もの親の不幸を
背負って生きていく
・主位を不幸にして
喜びを感じることもないままに
『生まれてくるんじゃなかった』
と思うような最高に絶望な人生を……
・ぞくぞくするような素敵な話だね
ティナに感謝をする磯村。
松村に向き直り
「お礼に君の知らない話をしてあげる」
と言う。
・この世界には見えないモノが沢山ある
・見えないモノこそ美しい
・どこにいるか分からない
触れてはいけないモノ
・我々はそれを妖と呼んでいる
・妖は人の心の弱さが大好物
・皆結局自分のことしか考えない
・そんな愚かな人間達を
破滅させる見えない存在
・あの扉の中にはそれが大量にいるらしい
・普通の人間が開けようモノなら
相当ヤバいモノが出てくる
・それこそ
この世界が壊れてしまうくらいの
すると
磯村の後ろにある
磯村の影が黒い霧となり
蜘蛛の形を作る。
それに反応する神木。
・でも”祓う者”がこの扉をあけると
どんな妖でも吸い込み封じ込めてしまう
・そしたら困ってしまうあの方が
霧の蜘蛛が松村の方まで移動している。
「だから君は消しておこうかなって」
と磯村。
影が松村を攻撃してきた瞬間
神木が間に割って入り
神木が攻撃をくらってしまう。
倒れる神木に駆け寄る松村。
「わたぬき君!!」のティナ。
「ダメダメ。
君はまだ食べ頃じゃないんだって」
磯村の指には神木の血がついていて
それを口に運び舌なめずりする。
壁に映る影の蜘蛛がまた動き出す。
大慌てで弓矢を手に取ろうと動く松村。
次の瞬間
磯村が吹き飛び床に倒れる。
気が付くと
部屋中に蝶々が飛んでいる。
「ちょっと
お使いひとつできないの?」
とコウが姿を現す。
「コウさん」の神木。
身を起こす磯村。
「次元の魔女」とつぶやく。
「あの女の好きそうな顔してるわ」
とコウ。
「あの方が言っていたもう一人の魔女」
と磯村。
「人間なのに無理をして」
とコウ。
・あの方は自分を見つけ出してくれた
・あの方が望むことは何だってする
の磯村。
「あの女によろしくね。
いきなさい」
とコウ。
去っていく磯村。
神木に駆け寄るティナ。
自分が変な奴を連れてきた所為と
謝る神木。
本堂に飾られた酒を手に取って
3人を眺めているコウ。
場面変わって街中……
酒瓶を抱えたコウを先頭に
4人が移動している。
神木は松村がお姫様抱っこをしている。
「もう大丈夫」と神木。
おろす松村。
別れようとする神木だが
「家までいった方が……」
というティナに
「店は
願いを叶えたい者の前にしか現れない」
とコウが言う。
そして松村に対して続ける。
・祓う者……
貴方の力は神木の力になる。
その逆も然りよ……」
・おこること全てに意味がある
そう言って立ち去る。
追いかける松村とティナだが
既に神木とコウの姿はない。
コウの屋敷での生活が始まる……
場面変わって
コウの屋敷の中の池がある場所……
治療を施された
神木が池の前の床に座っている。
そこにコウが現れ
神木に傷の具合を聞く。
続けて「どんな気分」と
神木に現状の想いを聞いてくる。
「生まれて初めて
この目が誰かの役にたったから……
まぁ……」
と言葉を止める神木の続きを
「悪くはない?」
とコウが続ける。
少し微笑む神木。
また神木の頭をポンポンとなでる。
「対価なく遣り取りできるのも
人の想いだけなの」
ここで家政婦の申し出を承諾する神木は
コウの家にしばらく住むことを願い出る。
場面変わって
神木の日々の日常が描かれる……
3月17日の
カレンダーをめくるところから……
学校へ通いながら
コウの家の世話をする神木。
その日々の中で
お昼をティナに誘われる日があり
松村と共に3人でお昼を過ごす。
その次の日から神木は
お弁当を持参して
神木、ティナ、松村の3人で
お昼を共にする日が続き
仲が良くなっていく。
日々の中で
コウの家には数人の女性が
望みを言いに来ている。
その中には
神木に好意を寄せる女性もいたりする。
更に日が進み
鏡に映る自分が
自然と笑顔なのを見て
更に笑顔になる神木。
場面変わって
3月27日の
カレンダーをめくる神木……
更に場面が変わって
コウの部屋……
右手を眺めているコウ。
するとコウの右手が
一瞬ぼやけたように見える。
場面変わって食卓……
4人で食事をしている。
コウが神木に
「大切な物は見つかりそう?」
と聞く。
「いえ、まだ」の神木。
取り敢えず食事を促すコウ。
一口食べたところで
神木が松村の話をする。
「あいつ弓神事で忙しくて
弁当食ってすぐに帰っちゃう」
するとコウが
「じゃあティナが大変ね」と言う。
「え?」の神木。
「神木だって分かってるくせに」
のコウ。
ティナ救出を試し見る神木……
場面変わって学校……
弁当と鞄を持った神木の行く先に
ティナが立っている。
そして神木を目にするや
明らかに神木を避けるように
遠ざかっていく。
小走りに追いかけていく神木。
「俺何かした?」とティナに聞く。
「今は松村君がいないから」のティナ。
「それが……どういう……?」
の神木に対して
「分かってるくせに……」のティナは
走り去っていく。
場面変わってコウの屋敷……
大慌てで駆け込んで来る神木。
そのままコウの元までいく。
「コウさん。
俺ティナちゃんを助けたい!!」
と言う。
「コウさんにも
ずっと見えてたんですよね」
過去のティナの登場シーンが
映像として流れ……
そのティナの周りには
黒い霧がまとわりついている
コウが語り出す
・松村君といる時は大分抑えられていた
・彼の祓う力がそうさせるの
・だから彼女は
3人でしか貴方とはいようとしなかった
神木
・今までずっと
見てみぬふりをしてきました
・あれと関わりたくなくて
・でもティナは全部分かってました
・でも俺の前では明るくいてくれて
・今の俺なら助けられる
・コウさんの力を借りたら
何とかできるんじゃないかって!!
コウ
・あの子がもった生まれ持ったモノは
とてつもなく根深いの
・彼女は生まれつき幸せになれないの
・近付くものを必ず不幸にする
・あれは……彼女が抱える物語……
神木
「でもコウさんは助けられるんでしょ?」
コウ
「その人が対価を差し出すことを
その願いを本当に望むならね」
「彼女の持つあれを
無にする対価はとても重い」
食い下がる神木。
「でもコウさんなら!!」と言うが
何も言わないコウ。
「分かりました。もういいです。
コウさんの力には頼りません」
そう言ってコウの屋敷から出ていく。
場面変わって学校……
階段を下る神木。
下から登って来るティナを見つけ
前に立ちはだかる。
ティナの身体からは
黒い霧が噴き出している。
「それ俺が貰う!!」
と言い。
ティナの腕をつかむ神木。
すると黒い霧は
ティナから神木の方へ移動してくる。
そして
そのまま神木を宙に浮かし
下へと落下させてしまう。
「だめぇ!!」のティナ。
下の階では丁度松村が上がって来ていて
神木が目に入り手を伸ばす。
が掴めず、そのまま神木は
落ちて行ってしまう。
似すぎ……
恋をした夜は~♬♬
ここでりほ蜘蛛声がナレーションとして入る。
「他人が傷付くのは嫌なのに
自分のことは平気で傷付けちゃうのね」
地面まで落ちてしまう神木。
その瞬間時が止まり
黒い霧が神木をさらう。
りほ蜘蛛再び現わる……
ここでまた世界が変わる……
辺りは暗闇になり
そこに
りほ蜘蛛が現れる。
神木は空中で止まった状態になっている。
止まっている神木に近付き
神木の上を這うようにくっ付くりほ蜘蛛。
「美味しくなるまで待ってたんだけど
シんじゃうんだったら貰うね」
と笑顔で目の上に手をかざす。
すると目から
白いモヤが抜けていく。
神木が「ぎゃー!!」と
叫び声をあげると同時に
世界が戻り神木が地面に叩きつけられる。
場面変わってコウの家……
腕から血が滴り落ちている神木が
運ばれてくる……
時間が経ち神木が目を覚ますと
目の前にコウがいる。
(手当は施され目には眼帯がされている)
「え?」の神木
「悪い夢でも見た?」のコウ。
「違う」と言いながら
自信の身体全体をまさぐり
状態を確かめる神木。
コウに話をしようとするも
「外の空気をすってきなさい」と
言われてしまう。
過去の自分との対面……
場面変わってコウの屋敷の池……
池を覗き込み
水に映る自分を見る。
眼帯を外し目を確認する神木。
「何が起こっている?」
「あれは夢なんかじゃない」
水に映る自分の顔を触ろうとした瞬間
水の中から無数の手が出てきて
池の中に引きずりこまれてしまう神木。
場面変わって街中の横断歩道の上……
土砂降りの中
横断歩道の上に倒れている神木。
周りには普通に人が歩いているが
誰も神木の存在には気付いていない様子。
そこに一人の少年が通りかかる。
少年に声をかける神木。
少年は立ち止まり
神木の方をみて不敵な笑みを浮かべる。
すると神木は
少年の先にいる人に意識が向く。
「コウさん?」と呟く神木。
するとその女性に「お母さん」と言って
駆け寄る少年。
お母さんと呼ばれた女性の周りには
黒い霧がうごめいている。
一人呟き始める神木。
「母さんは妖に……」
「いや違う……」
「母さんは飛び出した俺をかばって……」
走ってきたトラックに弾かれ
倒れている女性。
そこに駆け寄る神木。
傍では少年が叫んでいる。
そして神木も叫ぶ。
女性に「お母さん!!」と叫びながら
駆け寄る少年。
「見入ってしまった。
この目の所為で……母さんは……」
次の瞬間
少年と神木が向い合い立っている。
少年
「世の中には
どうにもならないことてあるんだよ」
「運命に身を任せよう」
「考えても意味がない」
高校生神木が「お母さん!!」
と叫ぶと同時に現世に戻ってくる。
気が付くと
コウに膝枕をされている。
うちわで神木を仰いでいるコウ。
「誰も助けられない……」
頭に母親がひかれて倒れている姿が
浮かぶ神木。涙を流す。
起き上がる神木。
「コウさん。
僕は自分がどうなってもいいんです。
だからもう誰も傷つけたくない!!」
とコウに意思表示をする。
するとコウに
「また逃げるつもり?」と
言われてしまう。
「逃げてなんか……」
「貴方はまだ分かってない。
傷付いた貴方を見た人が
どう傷付くか……」
「え?」の神木。
「向き合う気がないなら」コウ。
「何なんです?」神木。
「考える気がないのなら」コウ。
「考えたって
仕方ないじゃないですか!!
どうせ何もできなんだから」神木
「だったら最初から向き合う意味なんて!!」神木
「じゃあもう好きにしなさい」
「考えるのをやめた人間と
これ以上話しても意味がない。」
「どうせ。どうせ運命は変えられない。」
と強くコウを睨んで
コウの屋敷から飛び出していく神木。
場面変わってどこかのベンチ……
ベンチに座って頭を抱える神木。
しばらくすると
再びりほ蜘蛛が現れる。
神木の隣に座り
頭を神木の肩にコテらせる。
「君は分かってるのにねぇ……」
「”つらいことから逃げ出したい”
って当たり前の事だもん」
「ツラかったね。可哀そうに」
「もう何も考えなくていいの」
「君の願いを叶えてあげる」
「身を任せなさい」
「全ては必然」
「君が欲しい言葉……たっくさんあげる」
場面変わってコウの家の中
気が付くと神木は
コウの屋敷のベットの上で寝ていて
2人の召使いに起こされる。
カレンダーは4月1日。
コウの元へ行く神木。
気まずそうに話かけるが
何事もなかったように
すがすがしく挨拶をしてくるコウ。
食卓を4人で囲む姿。
掃除をする神木。
コウの屋敷で
普通の日常を送る神木。
『今のままで良い』
と現状を望む神木の心の声。
夕飯時になり
コウに「夕飯は何が良い?」かと聞くと
「それよりも祭りに行ってこい」
「弓神事見てきたら」
と言うコウ。
拒む神木だが
コウが「祭りのやきそば」と
注文してきたので
祭りに行くことにする。
祭りに行くと
松村が弓神事を行っている。
見事に的の真ん中を射貫いている松村。
笑顔の神木。
少し時間が経ち
祭りの中で松村と鉢合わせする。
神木は階段から落ちた時のことを
聞こうとするが
それを遮る様に
持っていた食べ物を
神木に「やるよ」と渡してくる松村。
そのまま去っていってしまう。
「やっぱりあれは夢だったのか?」
の神木。
場面変わってコウの屋敷のベットの上……
2人の召使いに起こされる。
食卓を囲む4人。
前日と全く同じ言葉を放つコウに
「昨日も同じこと言ってましたよ」と
言う神木。
「そうだっけ?」のコウ。
「夕飯は焼きそばですか?」と聞くと
「それ良い」とコウが言うので
「コウさんが良いなら良いですけど」と
再び祭りに行く神木。
途中ティナが目に入るが
声を掛けない神木の姿。
弓神事を行う松村を見て
後に合流している。
別れ際にまた食べ物をくれるので
「またか……」と言う神木。
「?」の松村だが「今日誕生日だろ」と
渡してくる。
「だから昨日くれたのか……」と神木。
「昨日?」の松村。
「毎日祝ってくれなくても大丈夫だよ」の神木。
「昨日ってなんだ?」と松村。
「昨日もくれただろ?」と神木。
「何の話だ?」の松村。
ここでようやく
おかしいことに気付く神木。
大慌てでコウの元へ戻る。
場面変わってコウの屋敷……
焼きそばを持ってない神木に
「焼きそばは?」と声をかけるコウ。
それを無視して
「今日って何日ですか?」と
コウに尋ねる神木。
「4月1日。貴方のお誕生日」と
答えるコウ。
愕然の神木。
場面変わってベットの上……
2人の召使いが起こしに来る前に起きる神木。
カレンダーは4月1日。
何も言わずに
コウの屋敷を飛び出していく神木。
不審に思う召使いの2人。
街中で
磯村とりほ蜘蛛と遭遇する。
「同じ毎日気に入った?」
「楽しいでしょ?」
「君の目を食べてから
どんどん力が増してるの」
「だからお礼に願いを叶えてあげた」
「妖に恐れることもなく
小さな幸せに溢れた日々」
「最高でしょ」
「何にも考えなくてもいいの」
「ただただ快楽を貪って」
とりほ蜘蛛。
場面変わってコウの屋敷……
「おかえり」の召使い2人。
ぼーと突っ立っている神木に
通りかかったコウが
「どうしたの?」と尋ねる。
「すぐご飯にします」の神木。
そして
また同じ日常が始まる……
祭りの最中
「もう考えるのやめよう……」と
呟く神木。
そして……
数十回?
数百回?
と繰り返される4月1日……
繰り返される日々の途中
祭りの中で立ち止まり
「ここが俺の居場所」と呟く神木。
その後ろをティナが通る。
遂に声をかける神木。
立ち止まるティナ。
2人で歩く神木とティナ。
「関係が深まるほど
相手を不幸にしちゃうの」
「だから街を転々としてて……」
とティナが打ち明ける。
顔が曇る神木に
「そんな顔しないで」
「どうにもできないことってあるんだよ」
とティナ。
「世界は決して皆に公平じゃない」
「この街は楽しかった」
「松村君といると
何故か嫌なことがおきないって気付いて」
「でも、結局神木君を傷付けちゃった」
「ごめんね」
とティナ。
「やっぱりあれは夢じゃない」
「教えて!!
あの日なにがあったのか?」
頭を下げてお願いする神木。
場面変わって回想シーン
地面に叩きつけられ血だらけの神木を
抱きかかえる松村と
泣きながら寄り添うティナ。
「何もできなくてごめん」
とティナに謝る神木。
「喋るな」の松村
「そんなことないから」のティナ。
その時神木から蝶々が舞い上がる。
その蝶を見上げる2人。
「『こっちに来い』と言われた気がした」
とティナ。
すると辺りが
一瞬にして藤の花のある空間に変わる。
目の前の門が開くと
中にはコウがいる。
「願いを叶えたいと思う人の前に
店は現れる」
回想シーン終わり……
「それで神木君の怪我は
無事治りましたとさ。
めでたしめでたし」
と話をくくるティナ。
「ごまかさないで!!」と神木だが
「まぁいいじゃんそれは」と
軽くあしらうティナ。
納得がいかない神木は食い下がり
ティナの腕をつかみ引き留める。
その時腕に何やら違和感を覚える神木。
袖をめくると凄い痣がある。
観念したティナが真相を語る。
「松村君と一緒に対価を祓ったの」
「松村にも同じ傷が?」
「松村君は……」
再び回想シーン……
コウが松村の左目に手をかざすと
目から赤いモヤが飛び出す。
(松村の目は右目は普通の黒目で
左目は青い)
それを神木の右目にいれるコウ。
「これで
祓う者と見える者が交わった」
と言う。
回想シーン終わり……
場面りゅうこう寺……
松村の元へ走ってくる神木。
そして
松村の頭を持って
目を覗き込む。
2人の目は同じ色の目になっている。
そして叫ぶ神木。
「何で?
何でそんなこと?
どうして俺なんかの為に!!?」
「俺がそうしたかったから。
お前が俺でも同じことするだろ?」
「違うか?」
と松村。
傍にはティナも来ている。
去っていく松村。
うなだれる神木。
「そんな顔しないで」
「最後は笑顔で別れよ」とティナ。
「最後?」の神木。
「この街に長くいすぎたから」と
今の街を出ていくと告げるティナ。
謝る神木に
「神木と出会えて良かった」
「なんで謝るの?」のティナ。
「こんな結末なら出会わない方が……」
と言いかける神木を遮る様にティナが喋る。
「違うよ。
誰だってずっと一緒にはいられない。
必ず別れの時はやってくる。
でも、一緒に過ごした思い出は
ずっと私の傍にいてくれる。
今まで本当にありがとう」
そう言うと去っていくティナ。
ティナを呼び止める神木。
振り向くティナ。
「私ができる唯一のことは
私が私を愛してあげることだから」
「明日が良い日になりますように」
「さようなら」
そう言って去っていくティナには
黒い霧が纏わりついている。
唇を噛み締め頭を抱える神木。
場面変わってコウの屋敷……
部屋に戻った神木が
日めくりカレンダーをめくる。
しかし
どれだけめくろうが
4月1日しか出てこない。
気が付くと後ろにコウがいる。
「怒ってる?」と
神木に尋ねるコウ。
「俺の所為で2人が……
俺なんかの為に……何で?」
「貴方は貴方だけのモノじゃないのよ」
「この世に自分だけのモノなんて1つもない」
「この世界では
みんな誰かと関わって
何かを共有している」
「ありとあらゆる選択肢が無数にある中で
奇跡的に縁が繋がる」
「俺はどうしたら……」
「未来はそれぞれの選択の先にある」
「選択することで変えられる運命もあるわ」
破いたカレンダーを握り潰し。
「俺は新しい明日に行きたい!!」
と強く告げる神木。
ニヤリのコウ。
再び4月1日の朝を迎える神木……
貴方は対価を払った……
4月1日を繰り返すという対価を……
ここを抜け出すには
りほ蜘蛛が神木を諦めるしかない……
あの女が素直に明け渡す訳ない……
4月1日から抜け出す方法はただ一つ……
その原因を消し去ること……
選ぶのは神木自身……
そう言うと神木の手の上に
ブレスレットを添える。
「少しは貴方の役にたつはずよ」
場面変わってりゅうこう寺……
ブレスレットを着けた神木が
松村の前に現れ
「助けてほしい」と告げる。
場面変わってコウ……
また
右手を眺めているコウ。
するとまたコウの右手が
一瞬ぼやけたように見える。
それを見て「そろそろね……」のコウ。
場面戻ってりゅうこう寺……
本堂の前で仁王立ちしている神木。
次の瞬間
後ろから抱きかかえるように
磯村が現れる。
「ここにくると思い出しちゃうなぁ。
君の血の味」
振り払う神木。
すると一緒にりほ蜘蛛も来ている。
「どうしたの怖い顔して?」
「この世界から出してくれ!!」と神木。
そんなことは通らないと
磯村は神木を締め付けて
痛めつけてくる。
するとブレスレットが反応して
磯村が吹き飛ぶ。
すると今度は
りほ蜘蛛が神木の胸倉を掴む。
「ここから出せ!!!」の神木。
そこに松村が現れ矢を放つ。
それを磯村が割って入り防ぐ。
矢は肩に刺さり磯村は倒れる。
(生きているかシんだかは分からない)
そんな磯村を見て
「あ~あ顔は好きだったのにな」の
りほ蜘蛛。
松村の方へと向かう。
そのりほ蜘蛛の脚にしがみ付き
あがく神木は松村に「走れ!!」と言う。
松村は本堂へと駆け込み
悪い者が封じ込められた置物の
お札を剥がし扉を開けようとする。
が、
そこに神木が吹き飛ばされてきて
2人とも倒れてしまう。
「その作戦悪くない」と
りほ蜘蛛。
「でも運命は決まってるの」
「全ては必然」
松村は弓を構えるも
りほ蜘蛛の能力の前に
なす術もなくやられる。
気が付くと
また世界は変わっていて
真っ暗な空間にいる。
神木とりほ蜘蛛だけになっていて
神木は赤い糸でがんじがらめにされて
身動きが取れなくなっている。
「何で私が
世界をループさせられたか分かる?」
「君が強く望んだから」
「それ程に君の力は強いの」
りほ蜘蛛はだんだんと神木に近づいて行く。
そして目の前まで来る。
「今願ってること叶えてあげようか?」
「ずっとここにいて」
「そうすれば皆を開放してあげる」
「君だけが4月1日を繰り返して」
「私に残りの目を食べられ続ける」
「どう?」
「君一人の犠牲で皆が助かるの」
空中に引き上げられ垂れ下がる
神木の腕。
そして
りほ蜘蛛が
その手を掴もうとした瞬間……
コウから受け取ったブレスレットが
光を放ち衝撃が走る。
手を引っ込めるりほ蜘蛛。
次の瞬間
神木に絡みついていた糸が
砕け散る。
解放される神木が
「やめました……」と呟く。
「もうやめたんです」と続ける神木。
「は?」のりほ蜘蛛。
「やっとわかった」
「人を助ける為に自分を犠牲にする……
それがどれだけ自分勝手なことか」
苛立ちのこもった「はぁ?」を放つりほ蜘蛛。
「俺が傷付いたら
心を痛めてくれる人がいる」
「貴方が気付かせてくれた」
「ありがとう」と
りほ蜘蛛にお礼を言う神木。
「あんた何言ってんの?」
「人間なんて何も変わらない」
「変わらないんじゃない。
変えるんだ」
の神木。
「そういうの嫌い」のりほ蜘蛛。
再び糸で神木を縛る。
糸に締め付けられて苦しむ神木。
すると
辺りに蝶が舞い始める。
蝶の数が増えたと思うと
今度はいつのまにやら
藤の花で辺りが包まれ
化け物が閉じ込められている
置物も姿を現わす。
神木もいつの間にやら
糸から解放されていて
顔をあげると
空中からコウが舞い降りてくる。
「相変わらず強引な女ね」
のりほ蜘蛛。
「大切な物見つけたみたいね」
と神木に近付くコウ。
「よっぽどその子がお気に入り?」
とコウに尋ねるりほ蜘蛛。
「甘い卵焼きが好きなの」と言うコウ。
「なにそれ?」と怒りをあらわに
コウに糸を放つりほ蜘蛛。
しかし糸はコウの前で
あっさりと消し止められる。
「良い顔してるじゃない」と
神木を見つめるコウ。
「ここでこの子を助けても
運命は変わらない。
所詮いつかは喰われる定め」
「全ては……」
そう言って
空中を物凄いスピードで動く。
だが
コウが手をかざすと
あっさり地面に落とされてしまう。
『どうなってんの?顔』のりほ蜘蛛。
「必然?」
「そう全ては必然よ」とコウ。
実力の違いを感じとったりほ蜘蛛は
後ずさりをして
妖が封じ込められている置物の扉を
開けに行く。
神木が「待て!!」と言うが
それを静止するコウ。
「欲しい物は絶対にほしいの!!
どうしても手に入らないなら
この世界ごと全部消えちゃえ!!」
と言って
扉を力強く開けようとするりほ蜘蛛だが
全く扉が開かない。
するとコウが口を開く。
「その扉は人間が作った物。
人間にしか開けられない」
「無限にある道を
選び進むのは己自身」
「全ては己が選んだ定め」
扉を開けるのやめ振り返るりほ蜘蛛。
「無理よ。
そんなに強くない」
「みんな思考停止してる」
「ホント人間て愚かな生き物」
と言い高笑いを始める。
するとそこに
生きていた磯村がフラフラと現れる。
「あぁ、そうかもな……
だから一緒にいてくれたんでしょ?」
と言う磯村を
扉の前に引っ張るりほ蜘蛛。
りほ蜘蛛を間に挟んだ状態で
磯村が扉と向き合うという構図になる。
言葉を放つことなく
磯村を抱きしめ
『大事にしてあげてますよ感』を出す
りほ蜘蛛。
磯村は「俺の顔好き?」と
りほ蜘蛛に尋ねると
扉を開ける。
「やめろ!!」の神木。
ニヤリのりほ蜘蛛。
ニヤっの磯村。
ポンっと磯村の背中を押すりほ蜘蛛
次の瞬間
磯村が扉の中に吸い込まれてしまう。
ため息のコウ。
「ぎゃはは」のりほ蜘蛛。
「もう止められないよ!!
人間なんて皆食べられちゃえ!!」
そうこう言っていると
りほ蜘蛛も吸い込まれてしまう。
「馬〇ね」のコウ。
扉の中からは
無数の手の形をした黒い霧が
ウヨウヨと動いている。
扉の方へ歩き出すコウ。
すると手の形をした黒い霧が消える。
と
次の瞬間
空間を埋め尽くすくらいの
黒い霧が扉の中から飛び出して来て
本堂の中を埋めつくす。
その中から
松村が過去に中を覗いた時に見た
大きな目玉が姿を現す。
場面変わって……
街中の画が挟まれる。
街中の黒い霧も反応していて
膨大な黒い影がうごめいている。
それは普通の人間にも見えていて
皆反応している。
場面変わって
再び本堂の中……
ここで松村が目を覚ます。
ちょうどその時
真横に神木が吹き飛んでくる。
「何が起きてる?」の松村。
「お前の先祖が封印したモノが
目の前まで来てる」と神木。
「逃げるか?」の松村。
「駄目だ。
こんなの世界に出したら
世界がめちゃくちゃになる!!」
「じゃあどうやって?」
「分からない。でも……
やるしかないんだ!!」
と立ち上がる神木。
すると目玉を前にしたコウが口を開く。
「時は来た……」
「はるか昔から存在してきたモノ達」
「人が拘わらなければ、ただの現象」
目玉の方に手をかざすコウ。
「後は貴方が選ぶことよ」と言う。
その言葉に反応した神木が
床に落ちている
松村の弓矢を拾う。
そして構えるも
黒い霧が邪魔をして
上手く放てない神木。
そこに松村が来てくれて
後ろから神木を支え
一緒になって弓を弾いてくれる。
矢は放たれ
目玉の前にいるコウの前を通り過ぎる
その時にコウが何やら力を掛け
矢が数匹の蝶に変化する。
そしてそのまま目玉に命中する。
目玉は花火の様に光をはなつと
コウの前でバスケットボール位の
大きさになって光をはなっている。
それを抱きかかえるコウ。
そして神木を見つめる。
「元の場所にもどりましょ」のコウ。
光を抱いたまま
開いた扉の中に入っていく。
「コウさ~ん!!」の神木。
少しの間があった後
「閉めよう」
「全部終わらせよう」と神木。
松村と一緒に扉を閉める。
場面変わって次の日の朝
コウの屋敷の神木の部屋……
目覚める神木は
カレンダーをめくる。
カレンダーは2日になる。
『コウさん。聞こえますか?
偽物の世界から戻ることができました』
『結局俺は誰かに助けてもらわないと
何もできませんでした。
あの時はああすることしかできなくて』
『結局コウさんを
犠牲にすることしかできなくて……』
「貴方は変わったわ……」と
コウの声が聞こえる。
例え何も変わらなくても
世界を見るその角度を変えるだけで
運命は変えられる。
貴方は自分で決めて歩き出した
そして
自分を許し愛することができる様になった。
コウの屋敷の池のある場所まで行くと
そこにコウの後姿がある。
振り向くコウ。
「コウさん」
「なあに?」
「コウさん。行かないで下さい。
やっと
やっと貴方に出会えたんです」
「人はね
出会うべき時に
出会うべき人と出会う。
全ては……」
「必然だから」
「そして
別れもまた同じ」
そっと神木を抱くコウ。
「対価を払うから消えないで」
「やだ。やだ」
と駄々とこねお願いする神木。
その口にそっと指をあてるコウ。
「私の願いを聞いてくれる?」
「私の願いは
貴方がこの世界にいてくれる。
ただそれだけで良いのよ」
「さようなら君尋(きみひろ)」
(ここまではずっと苗字で呼んでいたが
初めて下の名前で呼ぶ)
そう言うと
コウの身体は無数の蝶になり
飛んでいってしまう。
場面変わってコウの屋敷の食卓……
朝食を作り
一人食卓に座り食べ始める神木。
食べながら涙する。
コウの座っていた席を見る。
手にはコウからもらったブレスットがあり
それを眺める神木。
場面変わってティナ……
腕には
神木がコウからもらったブレスレットと
同じ形をした物を着けている。
神木ナレーション……
『世に不思議は多けれど
どれほど奇々怪々な出来事も
人が見なければ……
拘わらなければ……
ただの現象……
人こそ
この世でもっとも摩訶不思議な生き物』
場面変わってコウの屋敷……
部屋の中で立っている神木の元へ
松村が来る。
「よう」
「これで良いのか?」
と神木に尋ねる松村。
「これがお前が選んだ答えなのか?」
答える神木
「ここが俺の居場所だ」
「俺はこの店を継ぐ」
「この店は必要なんだ。
俺にも……
まだ見ぬ誰かにとってもな」
「どんな選択でも
お前が選んだのならそれで良い」
傍に置いてあった弓を手に取り
「俺も選んだ」と言う松村。
神木の肩に蝶が止まる。
キセルをひと吸いする神木。
「この世に偶然なんてない
あるのは必然だけ」
召使いの2人が客を通す。
「神木様にお客様~」
そこに客が一人入って来る。
元々コウが座っていた椅子に
神木がいて
横には松村が立っている。
「さぁ貴方の願いは?」
終わり
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